私の仕事観をぶっ壊してくれた棺桶製作会社さんとの話

映像の仕事をしている、と言うと、たいてい「昔から好きだったんですか」と訊かれる。
正直に言う。違う。
私がこの世界に入ったのは、たまたまテレビ制作会社に受かったから、ただそれだけだ。情熱に突き動かされて飛び込んだわけでも、子どもの頃からカメラを抱えていたわけでもない。スタートは、ものすごく地味で、ものすごく偶然だった。
だから長いあいだ、私にとって映像は「納品して、お金をいただく」仕事だった。良いものを作る。期日に間に合わせる。請求書を出す。それで完結する、職業としての映像。それ以上でもそれ以下でもなかった。
その感覚が、根っこからひっくり返った日がある。
会長室に、30人
共栄さんという会社の動画を納品した日のことだ。
棺を扱う会社、つまり人の最期を支える仕事をしている会社だ。その会社の想いを、映像にした。
納品の日、会長室に通された。ドアを開けると、そこに30人くらいの社員さんが集まっていた。何事かと思った。
そして、拍手だった。
「ありがとうございました!」
30人が、私に向かって、頭を下げて、手を叩いてくれていた。
嬉しい、の前に来たもの
あの瞬間、嬉しいという気持ちは、実は最初には来なかった。
最初に来たのは、もっと不思議な感覚だった。
——自分のしたことが、こんなにも喜んでくれる人たちがいるんだ。
そういう、信じられないような、地に足がつかないような気持ち。自分の手から出ていったものが、見ず知らずだった30人の心をこんなに動かしている。その事実が、嬉しさより先に、ただただ不思議だった。
その日まで、映像は私にとって「作業」だった。でも会長室を出るとき、それは確かに「人の気持ちを動かす仕事」に変わっていた。
広告って、結局そういうものなんだと思う。物を売る技術でも、きれいな映像を作る技術でもない。人の気持ちを動かす仕事なんだ。
だから、会いに行く
この出来事があってから、私の仕事のやり方は少しずつ変わっていった。
画面越しで完結させない。とにかく、人と会う。会うこと自体を、肯定する。困っている人がいたら、こちらから駆けつける。そうやって人と向き合っているうちに、相手の中にある「まだ言葉になっていない想い」が見えてくる。それが、次の企画の種になる。
そしてもうひとつ。データに残すだけで終わらせたくない、と思うようになった。
写真集にする。紙にする。手で触れられる形にして、その人の心のすぐそばに残す。デジタルで撮ったものを、もう一度アナログに戻す。遠回りに見えるかもしれない。でも、人の気持ちを一番動かすのは、いつだってアナログの方なんだ。
あの会長室の拍手は、画面の中では起きなかった。同じ部屋で、同じ空気の中で、起きた。
私がやりたいのは、たぶんずっと、それだ。
メガホンズ合同会社は、広島県福山市で映像制作・企画を手がけています。「会いに行く映像制作」を合言葉に、人と人をつなぐ、つくる。